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消えた少年たち

オースン・スコット カード著 小尾 芙佐訳 『消えた少年たち』(上・下)
消えた少年たち〈下〉消えた少年たち〈上〉

これはある家族に起こった奇跡の物語である。

いや、うかつにもクライマックスでボロボロと泣いてしまったよ。小説で泣くのは久しぶりだ。文庫化されてすぐに購入したのが2年前。長いこと積み上げたままにしていてごめんよ。

物語は、フリーのゲームデザイナー、ステップ・フレッチャーとその家族が、生活のためアメリカ南部ノースカロライナのストゥベンという町に引っ越してくるところから始まる。時代は80年代後半、ちょうどアタリやコモドールというゲーム機が家庭に入り、IBMのPCが登場し、コンパックがATクローンを作り始めた頃。アメリカは不況の真っ只中で政治的にも不安定な時代。物語のほとんどは家族がどうやって生きていったのか、という話に終始する。
アメリカ人の、しかもモルモン教徒の話である。最初は読むのが辛くなるほど、細かい描写が続く。宗教用語がバンバン(解説もなしに)飛び出してくる。さまざまな問題によって引き起こされるひそやかな不安を背景に、物語は進む。そして、いつしかステップとその家族に感情移入してしまっている自分に気付く。ステップのように怒り、苦しみ、喜ぶ。
そして最後の、とてつもない展開。何事もなく過ぎようとしていた日常がそこだけ切り取られ、悲しみと奇跡に彩られる。「エンダーのゲーム」の作者であるオースン・スコット カードの作品だからSFだろう、という先入観が見事に打ち砕かれる。

と言うわけで、オススメの一冊。

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コメント

あぁ、最近は全然本読む暇もないのでチェックしてませんでした(^^ゞ
そか、エンダーの「前史」とかではないんですね(笑
「巡回劇団」とか、なんだっけなぁ、ああいうモルモン教徒としてのカード作品系列のやつね。SFではないけど、このシリーズもモルモン臭さを脇に置いておけば、なかなか読み応えありますよね。
カードは同年代ってこともあるけど、私的にはソングマスター以来ずっと注目の作家です(^^;
和訳されたのはほとんど読んでるかも。

いやもうね、最後の方はモルモン教とか関係ないくらいになりますから。是非呼んでくださいな。

私個人としては・・・「あんまり相性が良くなかった」という感じでしょうか。
特に「なんでSFで出すの? NVでしょ、これは」って印象が強い。
ラスト方向の必然性もあまり感じられなかったし。
確かにキャラクタ描写は巧いんだけど、各人の行動原理が宗教を根幹に置いてあるが故に理解できないまま物語が終わってしまったというところかな。

解説を斉藤由貴が書いているって点が笑えました。

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