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ニュートンズ・ウェイク

ニュートンズ・ウェイク

 急速に進化し《特異点》(シンギュラリティ)を突破し、超知性を得たAIによって多くの人類が“強制昇天”しいずこかへ消え去ってから300年。残された人類は、超知性“後人類”が残した超技術を利用し生き残っていた。超技術のひとつ、ワームホール・ゲートを独占するカーライル家の一員、ルシンダ・カーライルは調査に訪れた惑星エウリュディケで、後人類が残したと思われる戦闘マシン群を起動してしまう。惑星エウリュディケを中心に、エウリュディケの首長共同体、カーライル家、科学技術を探求する啓蒙騎士団(KE)、テラ・フォーミングされた惑星への移民を続けるアメリカ・オンライン(AO)、主体思想を追求する民主共産主義連合(DK)らを巻き込んで、事態は混沌を深めていく。

 解説で堺さんも書いているが、最近、英国SFを目にする機会が多い。英国SFと言うと個人的には、これでもかというほどのSFガジェットやアイディアを詰め込み、混沌とした中で突き進んでいくというイメージがある。本書でも地上にあるワームホール・ゲートや人間のアップロード・ダウンロード技術、“超ひも”投射砲、地表でも可能なFTLなど様々なガジェットが登場するが、その動作原理とかの説明は特にない。進化し消えた後人類が残した科学技術という設定なので、意図的に省いたのかもしれない。(SFとしては比較的お馴染みな技術がほとんどだし)

 一方で、カーライル家やKE、DKの描写には枚数を割いている。シンギュラリティ後でも人間は相変わらずイデオロギーに縛られているという設定は、後人類との比較という点では対比をなしていて面白いとは思うが、違和感を覚える点でもある。特にDKに関してはあまりにも理想的過ぎるような気がする。

 そうした思想的、政治的なシーンが多いため、同じように複数の主人公からの視点で物語が進行していく「シンギュラリティ・スカイ」のような冒険活劇という印象は薄い。さりとて堺さんが言うようにスペース・オペラなのか、と問われれば首を捻ってしまう。いっそのこと、最後の三章がなければ(それはそれで決着がつかない点もでるのだが)スッキリしたのではないか、とも思える。なんだろうな、全体的にドライな感じがして、もう少し主人公たちが報われてもいいのにと思えてしまう読後感だ。

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最近よく耳にする英国ニュースペースオペラ。取っ掛かりに選んでみた一冊。 ただどこが新しいのかはよくわからない。まあいいけど。 ストーリーは裏表紙のを引用するとこんな感じ。 21世紀後半、急速に進化したAIはついに〈特異点(シンギュラリティ)〉を突破、超知性体“... [続きを読む]

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