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ブレイブストーリー

 平凡な11歳の少年、ワタルは友人と取り壊し前の廃墟ビルで幽霊探しをしている途中、不思議な少年と出会う。少年はあるはずのない虚空に伸びる階段の先にある扉へと姿を消してしまう。翌日、その少年が転校生、ミツルであることを知る。そしてミツルが自分の願いごとを叶える為再び扉の中へ消えた後、ワタルも扉を開けて幻界《ビジョン》へと足を踏み出す。自分の家族を取り戻すために。

 宮部みゆき原作「ブレイブストーリー」のアニメ化。約2時間の中にまとめるためストーリー展開はやや性急で説明なしに観客を置き去りにしてしまう部分もあるが、非常によくまとまった「少年の成長物語」になっている。

以下、一部にネタバレ含む、長文注意。

映画が終わった後の隣の親子連れの会話。
母「どう?」
子「満足」

 あぁ、子供みたいにピュアな視線で観れたら(^_^;)

 ファンタジーやSFの中でも、現実の人間が異世界に入り込んでしまうという設定は、王道パターンのひとつと言えるだろう。「ナルニア」もそうだし「アーサー王宮廷のヤンキー」(これはタイムスリップか?)もそう。「ガリヴァー旅行記」、「NAGA 蛇神の巫」、「パートタイムプリンセス」NHK少年ドラマシリーズの「夕ばえ作戦」(あぁ、これもタイムスリップだ……というか、本家「タイム・マシン」も異世界ものと言えるか)、「はてしない物語」(ネバー・エンディング・ストーリー)、最近だと「ゼロの使い魔」と枚挙に暇が無い。こうした「行きて帰りし物語」は、異世界での旅によって主人公が何らかの形で成長することができる(現実では難しいシチュエーションであっても成立し、強引にでも成長のきっかけを与えることができる)ために、児童文学というジャンルでは特に多く見られる。それを否定しようとは思わない。

 ただ、「ブレイブストーリー」においては、非常に違和感を感じてしまう。例えば、世界そのものが異世界からの侵入者を“旅人”という形で組み込んでしまっていること。自分たちの世界とは違う世界がある、ということを一般的な認識として持っているのだ。ふむ。もうひとつの世界があり、そこから旅人が来る。いいだろう。では、その旅人は自分たちの世界に害悪をもたらさないのか?逆に、こちらにこれるのならば、あちらにいけるのではないか?「ブレイブストーリー」はそうした説明を一切省いている。

 また、主人公が扉を開けて幻界に到着した直後、「おためしの洞窟」をクリアしてその結果が採点され職業とランクが割り当てられる。私たちにとっては見慣れた“ゲーム”としてのお約束だ。つまり、すべてはゲームなのだという認識が生まれる。ゲームだから、何も知らない子供が異世界に放り出されても、この世界の人間は疑いもせず“旅人”を受け入れる。いきなり話しかけても「お前は誰だ?」などとは言われずに済む。そうした面倒な手順をすっ飛ばしてコミュニケーションできる便利な世界なのだと理解し、たとえ現実では突拍子もないことであっても受け入れることができる。しかし、その反面ワタルが幻界の旅で人々と触れ合い仲間を増やしたとしても「ゲームである」という認識が邪魔をして感情移入することが出来なくなってしまう。ゲーム性が物語性を侵食していると言ってもいいだろう。これが、私の感じた違和感の正体だ。

 映画「ブレイブストーリー」は、子供向けアニメとして(あくまでも大人の視点で)非常によく出来た作品だと思う。最初は見習い勇者だった少年が、何が大切なのかを知り、世界を救う。「ひとつだけ叶えられる願い」は「現実からの逃避」であると知り、現実に立ち向かっていく。ラストも予定調和だが、子供向け映画としては正しい。

 気になったのは、すばらしい自然が残る幻界を美しく描こうとする余り、醜い現実を見せすぎてはいないか?ということだ。上級生のいじめ、両親の離婚、ミツルに至っては、父親が母親の浮気相手を殺し、母親と幼い妹を巻き込んで無理心中をしている。あまりにも思い現実。このアンバランスさゆえに、ワタルにしろミツルにしろ幻界への旅が、積極的なものではなく、逃避としか思えなくなってくる。
 例えば、現実界での平凡だが楽しい日々の描写がもっとあっても良かったと思う。全体的に現実が希薄なのだ。さらに、幻界ではせっかくの「ハイランダーとしての義務」がきちんと描かれていないのも不満が残る。権力があればそれに伴う義務もある。幻界とて、現実と同じように苦しみや悲しみもあるはずなのだ。

最後に音について。
宣伝として俳優や芸人を使うのは申し方の無いことなのか。「たかがアニメだから」下手な芸人を使ってもいいや、ということなのだろうか。正直、松たか子やウェンツ瑛士、大泉洋はよくやっていると思う。ただ、うまいヘタ以前にテレビでよく見る有名人だと、声を聞くと顔を思い出してしまうのだ。そのたびに幻界から現実に引き戻されてしまう。
そして、これは設備の問題だと思うが、連続してノイズが乗ったように音がプツプツと切れていたのが気になった。

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