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著作権保護期間延長推進派の本音

 議論することはいい。肯定派、否定派、中立派、それぞれの意見を交換してよりよいものにする、そうしたプロセスが重要だと思う。だから、フォーラムなどで意見を言う/聞くのはいいこと…なんだと思うのだが、もしかしたらそうでもないのかもしれない。つまり、相手によると。

「100年後も作品を本で残すために」――三田誠広氏の著作権保護期間延長論 (ITmedia)

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 「作家にとって創作のインセンティブになるのは、作品が本として残ること。50年、100年後も作品を出版してくれる版元の期待に応えたい」――作家で著作権保護期間延長論者の三田誠広氏は、7月24日に開かれた情報通信政策フォーラムのセミナーでこう述べ、著作権保護期間の延長すれば創作意欲が高まるとの考えを示した。

(中略)

 三田さんは「出版元は、売れると見込んで作品を本にする。わたしは作家として版元の期待に応えたい。著作権の保護期間が延長され、50年後も100年後も私の作品を本にしてくれるという版元がいればうれしい。作家にとっては、本として出版してもらえるというリスペクトが大切だ」と主張する。

 これに対して会場の参加者から「出版されることが重要なら、死後50年でパブリック・ドメインになった方が出版のチャンスが増えたり、『青空文庫』などで多く人に読んでもらえるようになる。保護期間延長の理由にはならないのではないか」という意見が出た。

 三田さんは「保護期間が切れた途端に、心ない人によって思いもよらない形で作品が利用されることもある。本は、デザイナーや編集者とともに、手触りや書体など細部にまでこだわって作られる芸術作品であり、そこに作家として参加できることが創作活動におけるインセンティブだ。わたしにとっては紙に印刷された本という形であることが重要。それにパブリックドメインになれば、出版元がもうからない」と反論した。

 日本の著作権法では、一般著作物の著作権・著作隣接権は著作者の死後50年間保護されるが、米国や英国、フランスなどでは70年間で、延長派は「70年という世界標準に合わせるべき」という主張を行ってきた。「保護期間を70年としているのは、ベルヌ条約を締結している158カ国中69カ国。国の数で言えば過半数とは言えないが、アメリカ、EU、南米など、コンテンツの流通量が多いの国のほとんどが70年だ」と三田さんは言う。
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 この記事を読んで思った。『パブリックドメインになれば、出版元がもうからない』これがこの人の(ひいては著作権保護期間延長推進派の)本音なのだと。

 そりゃ川端康成や夏目漱石のような著名な作家の本ならば、死後何年経とうと出版してもらえるだろう。でもそんな作家はほんの一握り。その陰には初版しか出してもらえない作家なんて山のようにいるわけで、そういった人々は無視ですか、そうですか。
 第一、「創作のインセンティブ」が「本になること」というのが痛い。まずインセンティブを考えるのがおかしい。考えるならモチベーションだろ。そしてそのモチベーションは「多くの人に作品を見てもらいたい」ということじゃないのか?その結果としてインセンティブ、インカムがあればハッピーということじゃないの?この記事を読んでいると、すべての作家が金のために作品を作っている、というように思えてならない。一般の人が聞いても、「なんだ、結局金かよ」と思うのではないだろうか?

 で、池田信夫氏による同じセミナーのレポート。
池田信夫 blog 三田誠広氏との噛みあわない問答

 こちらを読むと、三田氏の理論破たんが良く分る。しかしなぁ、この三田誠広という人、コピーのミタの創業者一族なんだよなぁ。なんだか皮肉な話ではある。

 個人的には著作権保護期間の延長論議については、静観してきたつもりだが、こうした記事を読んじゃうと、否定的な意見に傾いてしまう。もしも、作品を広く読んで欲しいと思っていても、自分の死後遺族が反対したとすればどうか?その逆もありうる。

 三田氏は「紙の本」にこだわっているようだが、はたして、数百年後に紙媒体の本がどれほど流通しているかは疑問。個人的には紙の本はなくならないで欲しいと思っているが、そうはいくまい。現在すでに行われているデジタルデータへの移行が進み、さらに新たなる媒体へと進んでいくはず。たとえば、文字だけでなく作者の感情や隠されたメッセージを直接読み取ることができるようになるかもしれない。あるいは作者の記憶までも伝達する…と、脱線した。

 要するに、三田氏の主張は現時点での一部の作者のケースを取り上げて、全部のケースにあてはめようとしているわけで、無理があるのは当然だ。文化は、金融や物流のように市場経済の中から生まれるものではない。(マーケティングによって生まれるものもあるが)将来、著作権が切れた作品のオマージュやコラージュから新しい表現方法、新しい文化が生まれるかもしれない。著作権保護期間の延長は、そうした可能性を摘み取ることになるのでは?と考えてしまう。

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