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ダビング10を巡るドタバタ

 ダビング10の問題が各メディアでクローズアップされるなか、権利者側とメーカー側の動きも活発だった。ここ数日の動きをまとめておく。

権利者側「メーカーが議論を振り出しに戻した」 「ダビング10延期」問題で会見へ(ITmedia)

 日本音楽著作権協会(JASRAC)など著作権関連28団体で構成するデジタル私的録画問題に関する権利者会議は5月27日、メーカー側の委員の都合で、29日に予定していた「私的録音録画小委員会」の延期が決まったことに関連し、29日に意見を表明する会見を都内で開くと発表した。「メーカーの社会的責任と補償制度」と題し、「この問題の一刻も早い解決へ向け、意見を発表する」としている。

 なぜ、わざわざ29日に会見するということを2日前に公表したのか?委員会の開催予定が29日だからそれに合わせたとも思えるが、この時点で29日の委員会開催は延期されているのだから、その日にそのまま会見をしても問題ないはず。不思議に思っていたら、翌28日にJEITAが動いた。

「地デジに補償金不要」8割――JEITAがアンケート(ITmedia)

「地上デジタル放送は自由にコピーできないので、補償金を払う必要がない」は78.4%、「デジタル携帯オーディオプレーヤーに補償金を課すことに反対」は85%――電子情報技術産業協会(JEITA)は5月28日、私的録音録画補償金について、録音録画機器のユーザーにアンケート調査した結果を公表した。

(中略)

■「地デジ放送に補償金は不要」78.4%
 4月18日から21日にかけてネットで調査した。録音に関するアンケートは、12歳以上のデジタル携帯オーディオプレーヤー保有者500人に、録画も12歳以上のデジタル録画機器保有者500人に聞いた。

 録画に関するアンケートでは、「DVDレコーダーにテレビ放送をデジタル録画している」人は84.2%、「していない」は15.8%だった。

 テレビ放送をデジタル録画している人に、録画の目的を尋ねたところ、最も多かったのは「放送時間に見られないので後で見るため」(55.56%)。次いで「後日何度も見たり、ライブラリーにするなど、長期間保存のため」(16.14%)、「同じ時間帯に見たい番組が重複していたため」(13.91%)だった。JEITAは「上位の3つを合計した約70%は、タイムシフトのための録画だ」とする。

(中略)

■「デジタル携帯オーディオプレーヤーに補償金は不要」85%
 デジタル携帯オーディオプレーヤーに保存されている楽曲の録音源でもっとも多かったのは、「自分や家族が持っている市販CD、市販の録音済みMD・テープ」(34.91%)。次いで「レンタルショップから借りたCDからの録音」(32.43%)、「インターネットの有料音楽配信サービスからの録音」(8.25%)だった。

 JEITAは「レンタルCDや購入CDの対価に私的録音の対価が含まれていれば、保存されている音楽のほとんどに対して、私的録音対価が支払い済みとなる」と指摘する。

 「音楽CDに対して、購入代金を支払ったり、レンタル料金を支払っているのに、さらにデジタル携帯オーディオプレーヤーに補償金をかけるべきか」という質問には、85%が「補償金をかけるべきではない」と答えた。

アンケート結果はこっち。

音楽CD
http://www.jeita.or.jp/japanese/press/2008/0528/quest_tv_cd.pdf

テレビ放送
http://www.jeita.or.jp/japanese/press/2008/0528/quest_tv.pdf

 アンケートがネット上で行われたために、ある程度のバイアスは掛かっているとは思うが、それほど民意とずれているような結果ではない。

 このアンケートが公開された次の日に権利者団体が会見を開く。

「ダビング10を人質になどしていない」「メーカーは“ちゃぶ台返し”だ」 権利者団体が会見 (1/2)(ITmedia)

「ダビング10を人質にしてはいない」。権利者団体会見(AV Watch)

 AV Watchの記事から引用してみよう。

 現在の要因については、「“とあるメーカー”が極めて原理的に拒否反応を示し、議論の経緯も学習しないまま、さまざまな策を労してJEITA内部で多数派工作を行なった結果、と聞いている。また、経済産業省というプレーヤーが新たに参入してきたことで、2年の歳月をかけてたどりついた“文化庁提案”に対する理解が十分でないことからくる、頓珍漢な対応が多々生まれ、混乱にいっそう拍車がかかっている」と現状を説明。それらを配布した資料の中で「ちゃぶ台返し (ノ-_-)ノ ~┻━┻」と表現し、新たに表明された懸念について反論した。

 なお、ここで言及した「経済産業省の動き」については、「伝聞に基づくものだが、文化庁提案についてそれを受諾するのは難しいという方向に動かれているという風に聞いている」と説明。“とあるメーカー”については、「わかっていますが、記者会見の場ではいえない。議論を(メーカー批判に)誘導するつもりで言っているわけではない」とした。

 非常に曖昧な根拠で非難をしているように思えるのだが。『とあるメーカー』が分かっているならちゃんと批判すればいい。それができないのはなぜか?もちろん混乱する可能性もあるが、正面切って戦ったら負けると思っているのではないか?なんだか曖昧模糊とした仮想敵を作り上げることで、一方的にメーカー側が悪者であるかのような印象操作というイメージを受ける。

 ちなみに、この発言の背後には、経済産業省が補償金廃止を(提言という形で)主導しているという事が挙げられる。要するに、経済産業省vs文化庁の綱引きが裏で行われているわけだ。

 新たに表明されたという「懸念事項」は、(1)「(補償金の対象となる)HDD内蔵の一体型機器は汎用機と区別がつきにくく、いずれ汎用機の指定につながる」、(2)「制度が縮小していく保証がが無い」とのもの。

 1については、「2年の議論を経てパソコンを制度の対象に加えないことに権利者は同意した。最大限の譲歩。一体型の機器と汎用機が区別がつくにくい、というが、HDDレコーダ/プレーヤーのどこがパソコンと見分けがつきにくいのか? メーカーはいったいいかなる販売戦略で売っている、理解に苦しむ」と反論。加えて、「録音録画メディアはMDやDVDからHDDに移行しつつある。対象の拡大ではなく、シフトしているだけ。一体型の機器を加えなければ補償金の実体は生まれない。これは(文化庁の)中間整理案でも書かれている」と訴えた。

 2については、「拡大してく“ネットの世界”を補償金の対象から外す。まさに制度が縮小していくことの最大の根拠」と反論した。

 反論になってないなぁ。

 「パソコンを制度の対象に加えないことが最大限の譲歩」って、どれだけ上から目線なんだろう?パソコンに補償金掛けないでやったんだから文句言うなとでもいいたいのか。その“補償金ありき”の姿勢こそが問題の根源ではないのだろうか。まして、シフトしているというのなら、CDやDVD、MDへの補償金課金は止めるのが筋だろう。今までの補償金をそのままに新しく課金対象を増やすのは、拡張・拡大であってシフトとは言わない。

 「ネットを補償金の対象から外す」というのは、全く意味不明。コレまでの議論の中でネットに課金するなんて話が出ているのか?ネットが補償金の対象になるかどうかは別にして、ネットを外したからといって縮小していくことの根拠とはならないだろう。

 以前にも書いたけれど、縮小するというのならきちんとロードマップを示すべき。状況が変わったら、都度議論すればいいだけの話だ。ロードマップを示すということは、約束するということ。自らきちんと「縮小・廃止する」と名言すべきだ。

 また、「そもそもコピーワンスの問題の発端は“メーカーの落ち度”」と説明。「ムーブの失敗やクレームは、メーカーの技術力の未熟さとサポート体制の不備によるもので権利者と何の関わりも無い」とし、「補償金制度の範囲内で、できうる限りの可能性を模索した結果、ダビング10が生まれた。(総務省の)第4次中間答申に“権利者への対価の還元”が前提に謳われており、その策定に当たって、メーカーは何の意義も申し立てていない」とし、「メーカーは、権利者に尻拭いをさせながら、放埓な主張を繰り返して、第4次答申の実現を危うくしている」とメーカーの対応を非難した。

 問題をメーカーの落ち度としてしまうのは、いかがなものか。コンピュータの世界で「移動」といえば、相手先メディアにコピーしベリファイして確認してから消去するという手段が当たり前。それを無理矢理コピー中にも元データの削除をしろと制限を掛けたのは誰か。権利者側の無理な要求がこうした問題の一因になっているとはいえないだろうか?

 さらに、「権利者はダビング10を人質に補償金の拡大を主張している」との意見に反論。「ダビング10の実施期日確定にゴーサインを出すのは情報通信審議会の検討委員会。委員会で合意が得られないのは、メーカーが一貫性の無い行動を取るためで、権利者はダビング10を人質になどしていない」と強調した。

 そもそも縮小・廃止の方向に向かっていたはずの補償金の対象を、いきなり拡大してきた文化庁が問題であり、文化庁の後ろには権利者団体がいる。人質にしていないというのなら、委員会を開かずにダビング10にゴーサインを出せばいい。ゴーサインは出さない、けれど人質にしているわけではない、というのは理屈に合わない。傍目から見て人質・交渉材料にしているとしか思えない。

 さらに前日にJEITAが発表したアンケート結果についても言及している。

 加えて、菅原氏は、JEITAが28日に発表した「ダビング10への意識調査結果」についても「非常にいい調査」と言及。音楽CDの、主要な録音源についての調査では、「“レンタル/購入したCDの支払い対価に私的録音の対価が含まれていれば、保存されている音楽のほとんどに対して、私的録音対価が支払済みとなる”とされているが、これは“含まれておりません”。逆に言えば、“含まれていないのであれば……”という風にも考えられる」と調査結果から、補償金の必要性が読み取れると解釈。

 多くの消費者が補償金制度に不満を持っているという結果を見ずに、自分たちの都合のいい部分だけをピックアップして解釈している。怒りを越えて苦笑しか浮かばない。

 29日の権利者団体の会見を受けて、JEITAが30日に会見を開いている。

iPod課金は「消費者への不合理な負担」「受け入れられない」──JEITAが見解(ITmedia)

 ここまでいくと、どこまで続く泥仕合という感が否めない。関係省庁、権利者、メーカーが一緒に消費者の声を聞くべきではないだろうか。

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