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黎明の星

 かつて地球は土星の衛星であった。地球から土星の衛星に移住したクロニア人の学説は、硬直化した地球で無視された。だが、その学説を裏付けるように木星から新惑星《アテナ》が飛び出し、地球はその影響を受け壊滅する。わずかながらも生き残った地球人はクロニア人に救出され、土星近傍で生活することとなった。(揺籃の星)それから数年後、《アテナ》によって激動が続く太陽系では、クロニア人による地球復興作業が開始されていた。再び地球に戻った主人公ランデン・キーンらは、そこで生存者達に遭遇する。文明社会崩壊後、彼らは力が支配する原始生活へと戻っていた。一方、クロニアに避難した地球人の中では不満を持つ物が再び権力を求め行動を開始する。彼らはクロニアの宇宙船と地球上の基地を強奪、地球惑星政府の樹立を宣言した。

 J・P・ホーガンの作品には、スティーブン・セガールやヴァンダムのようなスーパーヒーローは出てこない。主人公ランデン・キーンはエンジニアだ。どちらかと言えば、巻き込まれた結果、何かに突き動かされて行動を起こし、それが核分裂のように他人の行動を促し結果多くの人の命を救うことになる。映画という短い時間の中でならスーパーヒーローは存在できるが、小説の中では嘘くさくなってしまうなってしまうからかもしれない。

 嘘くさいといえば、このシリーズの根幹をなす「地球が土星の衛星であった」というアイディアが一番嘘くさいというかトンデモ理論なのだが、作者が一生懸命理論付けして真実のように見せるているのが面白い。その根拠のいくつかは架空の物だしそれ以外もこじつけなのだが、登場人物同士の議論の中で補強してみたり否定してみたりと騙されてしまいそうになる。

 ホーガン作品のもう一つの特徴として、「理想世界を求める」というものがあると感じる。多くの作品が、理想的な社会を求めるための実験だったり地球人以外の知性体が構築した理想社会だったり、理想社会へ踏み出すための試練だったり。このシリーズでは、クロニア人社会が一種の理想郷で、通過貨幣が存在しない経済システムだったり科学的な探求が政治的な理由で阻害されるといった弊害がない社会が『なぜか』成立している。一方で、その対極にあるのが閉鎖的な学会だったり他人を支配する政治システムだったりするのだ。そうした今の資本主義社会に対する怒りも読み取れる。当然、悪役は旧体制を復活させようとする連中だ。その辺はきれいに黒白を付けているので、わかりやすい。

 ちょっと理想的すぎる社会システムが鼻につくが(笑)、後半は地球惑星政府(仮)との対決に加え崩壊後の地球も克明に描かれグイグイと引き込まれる。

 堺三保氏の解説によれば、続編も執筆予定とのこと。楽しみである。
 ちなみに、解説では天体衝突ネタの映画小説がいくつか挙げられているが、ニーヴン&パーネルの『悪魔のハンマー』が抜けている。通り過ぎるだけなら谷甲州の『パンドラ』とかも。

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