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2008/11/19

 ある日突然、夜空から星々が消えた。地球が奇妙な膜に包まれたために。後に“スピン”と呼ばれる現象は、地球を包み込むだけでなく、時間の流れからも取り残した。地球上での一年が、スピンの外では一億年となる。50年後には太陽の寿命とともに地球は滅んでしまう。人類は時間の流れ違いを利用して火星をテラフォーミングし移住する計画を立てたのだが…。

 

 これだけ中身の濃い作品は久しぶりに読んだ気がする。ページ数もあり読むのは大変だが、読み応えは十分。

 普通なら主人公になるであろう、火星移住計画を推進する天才ではなく、その幼なじみで平凡な医師にした、その配置の絶妙。物語の中心近くにいながらも、敢えて客観的な立場からの描写は、とても感情移入しやすい。主人公は普通の人間であり、人類の運命に影響を与えるような立場にはない。(しない、というよりできない)故に、宇宙の時間から取り残され世界の終末が現実のものとなった世界の様々な困難がひしひしと伝わってくる。『渚にて』のような寂寥感と『幼年期の終わり』のような人類の新たなステップへの予感を併せ持ち、さらに幼年期から続くラブストーリーという面もある。

 一方で、物語の現在と過去を織り交ぜながら、数億年(スピン後の地球上では数十年)単位で進むスケールの大きさや自己複製機能を持った人工生命による銀河探査、資源のない火星で発達した生命工学の神秘、スピンを生み出した<仮定体>等々、ハードSF的ガジェットも詰め込まれている。

 これはこれでひとつの物語として完成しているが、解説には三部作の第一部であるとの言及があり、楽しみと思う反面すぐに同じボリュームの作品を読むのは少し疲れそうという気持ちもある。

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