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「東洋経済」1/21号の記事に関する考察

 週刊「東洋経済」1/21号の特集は「自衛隊のコスト」。経済誌なので、防衛産業と自衛隊の関わりについて書かれている。その中でも触れられていたけれど、政府による武器輸出緩和の流れがきっかけになっているのだろう。誘導武器で三菱重工が抜けていたり、武器を輸出して欲しい西側の発展途上国からの視点がないのは気になったが、よくまとめられていると思う。

 ただ、特集の中にあった「開発の総本山・技本 その実力は本物か」という記事に対しては、首を傾げざるを得ない。技本とは、防衛省の研究開発部門、技術研究本部のことだ。MAMORに「技本レポート」を連載しているため、技本の研究者やメーカーの人達にも取材してきた。その過程で感じた印象と、この記事の内容が全くかみ合わないのだ。
 この記事が言わんとすることは、「メーカーに丸投げなんだから研究部門(技本)なんていらない」ということだろう。少なくとも私には、そのように受け取れた。けれど、結論ありきでそこに持って行こうとする余り、記事の中身がおかしい。

■無人機が利用されないことは技本が悪い?
 記事は、東日本大震災で自衛隊のUAV(無人機)、UGV(無人車両)が投入されなかったことに言及し、投入されなかったのは役に立たないから、(記事中では「〝怪しい〟国産兵器」と書いている)高い金を出して作ったのに役に立っていないじゃないかと述べている。(日本の無人機は兵器じゃないけどね)
 まず、技本が研究して装備化されたのは無人偵察ヘリだけで、UGVはまだ研究中だ。無人偵察ヘリを投入しなかったのは自衛隊(ひいては政府)の判断で、技本は関係ない。にも関わらず、憶測で技本が性能の劣ったUAVを作ったとミスリードしている。東日本大震災では2万人もの自衛隊員が投入され、現場は大変だったと聞いている。UAVだって自律飛行する訳じゃなくて操縦者が必要になるのだから、そこに人員を割くより別のところに配置すべきと判断したのだろう。その前提としては、情報収集衛星やJAXAの「だいち」による被害状況の観測が行われていたことがある。
 また「民間製、外国製のUAVとUGVが活躍した」と書かれている。具体的にはアメリカ軍のグローバルホークによる偵察を指しているものと思われるが、慣れない(アメリカから見れば)外国の地で偵察するリスクを抑えるために使用したのだろう。すでに他国で実績もあるし。(ちなみにUGVが震災で活躍した話は聞いたことがないのだが…)リスクを抑えたいアメリカと複数の情報ソースを持っている日本とでは、状況が異なるということだ。日本にとって、わざわざUAVによる偵察を行うメリットはない。
 さらに言うなら、自衛隊は航空機による観測を綿密に行っている。その中で2波長赤外線センサなど技本が開発した技術が活用されている。その事実は無視するのか?

■外国製品があるならそれを使えばいい?
 記事中段では、『「日本固有の環境に適合した外国製品が存在しない。ゆえに国産開発が必要だ」。防衛省が国産兵器を開発するときの常套句だ。同等品があると価格で輸入品に太刀打ちできないためだが、「外国にない」ことを追求するあまり「ガラパゴス化」した、世界のどこにも存在しない怪しげな兵器が開発される傾向にある。』と書かれている。書かれてはいるが、その開発されているという、〝怪しげな兵器〟の具体例については触れられていない。あるなら名称をきちんと出して指摘すべきだろう。
 外国に同等品があるが、日本では使えない例は挙げられる。壁透過レーダーだ。壁透過レーダーは、壁を通して内部の様子を把握するレーダーで、アメリカやイスラエルで実用化されている。ところが、これらの外国製品は日本では使用できない。電波法による規制に引っかかるからだ。技本は、日本の電波法に抵触しない周波数帯を使用し、さらに日本の建築基準法による鉄筋などの要素も加味した壁透過レーダーを研究し試作品を完成させている。いくら外国製品が安くても、日本で使えなければ意味がないのだ。
 そして、外国製品に頼ることの危うさを理解していない。装備品を外国製品でまかなった状態で、もし有事が発生し外国からの輸入ができなくなったら?兵器であるなしに関わらず、軍事に関連する機器の多くは機密扱い、ブラックボックスになっている。したがって、整備や補修は製造元が行うことになる。もし、メーカーが嫌だと言えば強制できない。兵器ではないが、日本の液体燃料ロケット「N-I」は、アメリカのデルタロケットの技術を使っている、というか、ほぼデルタロケットだ。そのため、エンジン内部など肝心な部分に関しては、日本のエンジニアは触れることも設計図を見ることすらできなかったという。もし、そんな状態に甘んじていたら、現在の日本の宇宙開発はどうなっていただろう?軍事部門においても同じだ。「外国に安い物があればそれを買ってくればいい」というのは簡単だが、安全保障の面からも、また技術面からも非常に危険な発想だ。

■機能は同じでも名前が違えば別のもの?
 技本が海外の情報に疎いという批判も書かれている。そのために技本が開発した「内面取付型付加装甲」と「スポールライナー」を混同しているという。スポールライナーとは、被弾した際に内部の剥離物が飛散しないようにするもののこと。いや、混同しているって、内面取付型付加装甲は被弾時に内部での被害を防ぐためのものだから、スポールライナーと同じものなんですけど。開発者に取材したときにも、「ロシアのスポールライナーを参考にした」と言ってたし。どうやら海外のスポールライナーがFRPが主流なのに対し、技本の付加装甲はFRPとセラミックの複合装甲であることから、違う物だと思い込んでいるらしい。確かに技本のものは厚いけど、機能に注目すべきであって、厚さはどうだろうと関係ない。
 そもそも技術の情報を集めるのに、見本市だけしかないと思っているのだろうか?見本市に行っていないからネット情報頼り?バカ言っちゃいけない。技本の研究者は少ない予算の中でやりくりしながら、学会に出席したり論文を集めたりしているよ。この清谷某という自称ジャーナリストは、そもそもが技術というものについて理解していないんじゃないかと思えてならない。
 また、海外のスポールライナーに使用されているアラミド繊維は東洋紡や帝人が作っているのだから、企業に問い合わせてサンプルを取り寄せればいいとも書いているが、これもおかしな話で、東洋紡や帝人がスポールライナー用の繊維を作っているからといって、「同じものをサンプルでくれ」といってホイホイ出す訳がない。当然、厳しい契約に縛られているはずで、よそに出そう物ならとんでもないペナルティがあるはずだとは考えないのだろうか?まぁ、「内面取付型付加装甲とスポールライナーは別物」という前提が間違っているのだから、その後の話が的外れになるのは仕方のないことか。

■メーカーがいるから技本はいらない?
 「各メーカーが自主的に先行して開発を行い、メドが立って技本の予算が付けば、「技本の研究開発」となるのが装備開発の実態だ」というのも私の知る限りそんなことはない。(だから実例を挙げろと)むしろ最近の取材では、装備化のメドが立っていない研究が多い。幕僚からの要求(ニーズ)がある前に種(シーズ)を作っている実例は山のようにある。(ちょっと誇張した表現か)

 技本はいらない、メーカーに研究開発を任せろと言わんばかりの内容だが、ものがものだけにメーカーだけで研究開発できるはずもない。先に挙げた壁透過レーダーのようなものならいざ知らず、兵器などはどうやって実地の試験をすればいいのだろう?装甲を例に取ると、技本では東側の兵器・弾薬を入手し、実際に射撃を行って装甲の効力を検証している。メーカーが国内で検証することはほぼ不可能だから、海外で行うしかないが、それは安全保障上問題があるだろう。

 要するに、技本とメーカーがより親密に、歩調を合わせた開発を行って行けばいい話で、技本いらないという結論は、偏見に満ちた悪意ある話だと言わざるを得ない。

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コメント

>海外のスポールライナーに使用されているアラミド繊維は東洋紡や帝人が作っているのだから、企業に問い合わせてサンプルを取り寄せればいいとも書いているが、これもおかしな話で、東洋紡や帝人がスポールライナー用の繊維を作っているからといって、「同じものをサンプルでくれ」といってホイホイ出す訳がない。


ダイニーマは危機管理産業展でもサンプルを配っていたし、帝人のアラミド繊維は自社の製品。

確かめもしないで、嘘を書くかw

自衛隊の御用媒体で提灯記事書くのが仕事のないライターさんか。
仕事が来ないもあたりまえ。

>東日本大震災では2万人もの自衛隊員が投入され、現場は大変だったと聞いている。 UAVだって自律飛行する訳じゃなくて操縦者が必要になるのだから、そこに人員を割く  より別のところに配置すべきと判断したのだろう。

旦那、FFOSも長距離偵察システムも両方とも自律飛行ができますけど。
で、UAVの部隊の人間が瓦礫の処理とかしていたわけ?

防衛省HP長距離偵察システムに関する事業評価が掲載されているけど、これは大規模災害とか、NBC環境下に於ける偵察に必要だとあるんだけどね。ご存じない?

>また「民間製、外国製のUAVとUGVが活躍した」と書かれている。具体的にはアメリカ  軍のグローバルホークによる偵察を指しているものと思われる

ハネウエルのへり型UAVとか、パックボットとか、フジインバック社のUAVも投入されたんだけど知らないんだろうね。この人。

パックボットとか、フジインバック社のUAVは防衛省が補正予算で調達したよね。パックボットの主契約社は技本のUGVを実質的に開発してきた日立。これはどういう意味かな?
>〝怪しげな兵器〟の具体例については触れられていない。あるなら名称をきちんと出して指摘すべきだろう。
まさにヘリ型UAVがそれだろうよ。

>外国に同等品があるが、日本では使えない例は挙げられる。壁透過レーダーだ。壁透過レーダーは、壁を通して内部の様子を把握するレーダーで、アメリカやイスラエルで実用化されている。ところが、これらの外国製品は日本では使用できない。

ところが危機管理産業展ではイギリス製品の代理店の商社は総務省にお伺いをたてたけど、OKだったから扱っているといっていたけどね。

>日本にとって、わざわざUAVによる偵察を行うメリットはない。
じゃあ、防衛省HPの長距離偵察システムの事業評価が間違っていると。

>混同しているって、内面取付型付加装甲は被弾時に内部での被害を防ぐためのものだから、スポールライナーと同じものなんですけど。

内面取付型付加装甲は付加装甲で、敵弾が貫通しなければ装甲剥離もあり得ないから、結果としてスポールライナーの機能を併せもっているだけ。
それで足りなければ外装式の付加装甲をとつけるという、諸外国ではあり得ない付加装甲なんだけどね。普通付加装甲は外部につけるよね。

多分この人スポールライナーの実物もみたことが無いんだろうね。せめてネットで外国メーカーの情報でも検索すればいいのに。

>、「ロシアのスポールライナーを参考にした」と言ってたし。
ネットで見た写真でしょ。しかも大昔のグラスファイバー使っていた奴でしょう。

>そもそも技術の情報を集めるのに、見本市だけしかないと思っているのだろうか?見本市に行っていないからネット情報頼り?バカ言っちゃいけない。技本の研究者は少ない予算の中でやりくりしながら、学会に出席したり論文を集めたりしているよ。

見本市や学会への出張費が年間百万円以下というの異常だろうよ。
論文集めて開発ができるならメーカーの人間があれだけ海外に出張して情報収集していないって。キミの主張が正しいならば日本のメーカーは無駄な努力していることになるけどね。

その少ない予算で(ホスト国のご招待で)、出張してさんざん飲み食いして、帰国後40日ほどで退官した開発官もいたよね。それが少ない予算のやりくりかいな?

本当に重要な情報は文字になって公開されていない。

論文だけで開発ができるならメーカーは苦労がない。技術開発に関する基本的な知識とと見識が決定的に欠けているね。

いくら防衛省がかなりの部数を買い上げている「広報誌」のライターだからっていて、
あまりに杜撰じゃないかな。それにプロの物書きが同業者を匿名のブログで批判する
ってのもどうよ?

>技本はいらない、メーカーに研究開発を任せろと言わんばかりの内容

自分で開発して自分で評価するシステムがおかしい、キチンと機能していない。
だから開発と評価部門に分けろいうのが筆者の主張だろう。

単に無くせなんて書いていない。

>技本では東側の兵器・弾薬を入手し、実際に射撃を行って装甲の効力を検証している。

これが始まったのはつい近年。それまでは検証してなかったんだよね?
しかも僅か数万円のカラシニコフに一桁多い予算を付けてかっているんじゃないかったけ。どこのお嬢さんだ?

>無人偵察ヘリを投入しなかったのは自衛隊(ひいては政府)の判断で、技本は関係ない。

凄い論理だね。
技本が開発し、調達された装備に技術的な問題があってもそれはすべて各幕、各自衛隊の問題であって技本に一切の責任はない、といいたいわけだね?

>さらに言うなら、自衛隊は航空機による観測を綿密に行っている。その中で2波長赤外線センサなど技本が開発した技術が活用されている。その事実は無視するのか?

>そして、外国製品に頼ることの危うさを理解していない。
どこに国産開発をやめろとかいてあった?
指摘は開発のあり方にある、ということだろう。


あんた、本当にマモルのライターさん、嘘だろw
もし、本物だったら結構問題だね。


へえ、空自のFR-4は未だにアナログの写真機材を使用し、基地に持ち帰って現像しているんだけど問題ないらしいね。

諸外国では固定翼のUAVも多数実用化されているけど、自衛隊には必要ないんだろうね。

>旦那、FFOSも長距離偵察システムも両方とも自律飛行ができますけど

当時の福島第一原発周辺みたいなほぼ無人の地域ならともかく、地上に被災者が山ほどいて、航空機もブンブン飛んでいる空域に無人機なんて飛ばせないんじゃないでしょうか。

>内面取付型付加装甲は付加装甲で、敵弾が貫通しなければ装甲剥離もあり得ないから、結果としてスポールライナーの機能を併せもっているだけ。

これって誰が言ってるんでしょう?こんなこと、技本も清谷氏も言ってなかったと思うんですが。どこでこのような解説がされているか、教えていただけないでしょうか。
そもそも、榴弾なんかだと装甲を貫通しなくてもその衝撃で装甲裏面が剥離して乗員を殺傷する効果もありますよね?

>見本市や学会への出張費が年間百万円以下というの異常だろうよ。

これ多分、清谷氏が過去の記事で言及していたことが根拠だと思うんですが(違っていたら訂正をお願いします)、100万円以下というのは「視察」の予算ですよね。研究者などが学会や調査なんかで出張する場合、その費用って「研究費」の中から支出するのが普通だと思っていたのですが、違うのでしょうか。(大学や研究所などの場合ですので、それ以外にも「こういうカテゴリで支出が行われている」というのがあれば教えていただければと思います)
あとは、防衛省や技本では出張などの費用はどういった予算に含まれるか、それがどのような根拠で決まっているかを知りたいところですね。

>調達された装備に技術的な問題があっても

技本の開発した無人機に技術的な問題があったのでしょうか?この記事にある「技本は関係ない」というのはあくまで今回の地震に限ってであると思いましたが。

> ダイニーマは危機管理産業展でもサンプルを配っていたし、帝人のアラミド繊維は自社の製品。

見本市などで配布しているサンプルが、そのまま装備品に使われていると思うのは短絡的過ぎませんか?一般の製造業でも、ねじなどのJIS規格品を除きサンプルで試して見て、その後、要求に合うよう仕様を詰めていきます。清谷氏の文中における「サンプル」は、実際に使われている物と読み取れたので、「(実物を)取り寄せるのは無理でしょ」ということです。

>ネットで見た写真でしょ。しかも大昔のグラスファイバー使っていた奴でしょう。
付加装甲の開発チームに取材しています。具体な内容は言えませんが。逆に「ネットで見た写真」とか「大昔のグラスファイバー」と思われた理由はなんでしょう?ソースはありますか?

>見本市や学会への出張費が年間百万円以下というの異常だろうよ。
年間百万円以下というソースはどこにありますか?
私は、清谷氏が「見本市に行かないなんて!」ということに対して「見本市より学会に参加したり論文読んだりしてちゃんとやってる」と言っているのですよ。論文だけで開発できるなんて、一言も書いてない。

>単に無くせなんて書いていない。
清谷氏の文章はそう読み取れるということです。

>これが始まったのはつい近年。それまでは検証してなかったんだよね?
>しかも僅か数万円のカラシニコフに一桁多い予算を付けてかっているんじゃないかったけ。
ここでは「東側武器の検証は民間では難しい」と言っています。UAVの件もそうですが、私の言わんとしているところを曲解していらっしゃるようですね。わざと論点をずらそうとしているのでしょうか?私の文章がわかりにくいというのなら、申し訳ありません。

>技本が開発し、調達された装備に技術的な問題があってもそれはすべて各幕、各自衛隊の
>問題であって技本に一切の責任はない、といいたいわけだね?
また極論を持ってきますね。私は今回の震災にあたり、政府の判断で無人偵察機が飛ばなかったと言っているだけですよ?

>自衛隊の御用媒体で提灯記事書くのが仕事のないライターさんか。
>仕事が来ないもあたりまえ。
>いくら防衛省がかなりの部数を買い上げている「広報誌」のライターだからっていて、
>あまりに杜撰じゃないかな。それにプロの物書きが同業者を匿名のブログで批判する
>ってのもどうよ?

匿名じゃありませんよ?私はちゃんと本名でやってるし「匿名のブログ」じゃありませんよ。清谷氏は著名人で私が無名ってだけ。で、無名のライターが著名人を批判しちゃちけないんですか?公開されている文章なんだから、批判や指摘や批評はあって当然。(それをちゃんと受け止めるかスルーするかは本人の自由ですが)
従って、私の文章に対する批判も結構ですが、批判と暴言はちがいますよ?

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