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祝!イプシロン成功 それにいちゃもんつける人

 9/14にイプシロンロケットが打ち上げ成功、惑星分光観測衛星「ひさき」の分離にも成功しました。M-Vの運用終了から長い時間かかった印象もありますが、なんにしても日本の宇宙産業にとってめでたいことです。
 でも、そんな成功をねじ曲がった視線で見る人間もいるのです。Twitterでも、自分の邪推を垂れ流しする人が多くて…まぁ、意見を言う権利は誰にでもありますから、それをやめろとは言いませんが、根拠もない妄想を垂れ流されても困ってしまいます。
 そんな中でも、BLOGOSというサイトに掲載された記事が気になりました。
 筆者は北海道大学で国際社会学の教授をされている方だそうですが…。
・イプシロンの評価について
イプシロンについては、これまでのM-Vのコスト高を是正するという一点に集中して開発され、モバイル管制を含む、様々な革新的技術を実現するロケットとして、評価することはできます。
しかし、それは単なる技術面での評価であり、日本のロケット戦略、宇宙政策全体から見ると、果たして日本に固体ロケットが必要なのか、H-IIA/Bおよび新型基幹ロケットが開発される中で、日本にそれだけ多くのロケットを持つ必要があるのか、商業市場に参入するとしても、果たしてイプシロンが内之浦から打ち上げられることを前提にするとそうした商業的な競争力は射場設備も含めて十分なのか、さらにはミサイルと同等の技術であり、人工知能による打ち上げ管理など、極めて自律性の高い技術を導入する固体ロケットは、外国から見てミサイルの開発と疑われることはないのか、とりわけ中韓との関係が悪化している中で、また北朝鮮が核・ミサイル開発をしている中で、日本がイプシロンを今、この時期に打ち上げることが外国に対してどのようなメッセージとして伝わるか考えているのか、など、様々な点で疑問が残るロケットだと思っています。
 冒頭のこの文だけでも、認識がおかしいことが分かります。

●日本に固体燃料ロケットが必要なのか?
 そもそも日本は敗戦直後から7年間、航空宇宙の研究を禁止されていました。そのため、海外でロケット技術の主流が固体燃料から液体燃料へとシフトしていた時にも、その時流には乗り遅れてしまいました。大型ロケットが必要になったとき、日本はアメリカからの技術援助を求め、デルタロケットを元にしたH-Iを作りましたが、その際にも液体燃料ロケットの核心部分は教えてもらっていません。
 しかし、その間日本人技術者が指をくわえて何もしない訳がありません。日本では、固体ロケットの研究をとことん追求しています。それこそ変態的なレベルまで。その甲斐あって、(個人的な意見ですが)固体燃料の制御では他国にひけをとりません。そして、固体ロケット技術は、固体ロケットそのものだけでなく、液体ロケットのブースターとしても利用されていますし、イプシロンの一段目はH-IIA/BのロケットブースターであるSRB-Aを流用しています。
 液体ロケットのH-IIA/Bがあるのに、固体ロケットのイプシロンが必要か?という疑問は、「害虫殺すのに火炎放射器使う必要か?」と言っているようなものです。H-IIAの軌道投入能力は、LEOで10,000~15,000kg、H-IIBだと19000kgです。一方、イプシロンは700~1,200kgです。重い運べる方がいいじゃないか、と思う人がいるかもしれませんが、人工衛星や探査機は重いものばかりではありません。1,000kg程度の衛星を打ち上げる場合、H-IIA/Bはオーバースペックなのです。また、軽い衛星を打ち上げなければならなくなったとしても、ある程度の重量が必要なのでダミーウェイトを載せることになり、とても非効率です。
 つまりは、適材適所。軽い衛星ならイプシロンで重い衛星ならH-IIA/Bで、というように使い分けることが、効率のよい宇宙開発、ひいては日本の宇宙開発ビジネスに必要なのです。
●商業的な競争力はあるのか?

 これはいろいろな側面があるので、一概には言えません。まず立地でいえば、内之浦がベストな射場であるとは言い切れません。理想を言えば、もっと人口密集地から離れていて、漁業権や騒音への保障などの問題もなく、赤道に近い方がよいでしょう。ですが、だからといって国際競争力がないわけではないでしょう。それこそ沖ノ鳥島をメガフロートで拡張してプラットフォームを作り射場にするって手も…あ、これは妄想ですね。
 次に技術的な面から言えば、これから成功を繰り返すことで国際的な信頼を得れば、十分にビジネスになると思います。ファルコンとかドニエプルとかありますが、ビジネスでは軌道投入能力ではなく信頼性が一番でしょう。
 鈴木教授は、
ドニエプルもロコットも元々はソ連のICBM技術の応用ないしは、ICBMそのものの流用であり、コスト面ではどう頑張っても太刀打ちできないところがあると思います。また、小型ロケットの市場となると、科学衛星や安全保障に絡む偵察衛星などが中心となるかと思いますが、日本にはそれだけの数の科学衛星がなく、仮に、現在、開発を検討している海洋監視衛星をイプシロンで上げるとしても、十分な実績を積むほどのチャンスはないかもしれないと考えています。
 と書いていますが、たしかに現時点では、量産しているミサイルを流用したロケットと比べればコストは高くなりますが、イプシロンが量産、とまではいかなくても多く作られるようになれば、当然コストは安くなります。また、イプシロンで飛ばす衛星を日本だけに限っているのもおかしい点です。NECなどはイプシロンでの打ち上げを前提に、発展途上国への衛星開発を売り込んでいます。理想を言えば、東南アジアやインドといった比較的日本に(地理的に)近い発展途上国の衛星を日本で製作し、イプシロンで打ち上げる、というケースを積み重ねられれば、十分ビジネスとしても成功できると考えます。近年では、宇宙関連の学部学科を持つ大学も増えている(私が大学に行っていた頃に比べて、です)ので、大学で衛星を打ち上げるなんてケースも出てくるのではないでしょうか。
●外国から見てミサイル開発と疑われないか?

 まず、固体ロケットをミサイルに転用できるか?という点について考えてみましょう。現在のような打ち上げロケットの元祖は、ドイツの開発したV2ロケットで、イギリスへの攻撃に使用されました。スプートニクなどを打ち上げたソ連時代のロケットも、ミサイルを転用したものです。こうしたことからロケットがミサイルに転用できるのでは?と考えることも仕方のないことだと思います。ですが、原子力発電所があるからといって原爆を作れる訳ではないように(え?作れると思ってる?)、ロケット技術があるからといってすぐにミサイルに転用できるわけではありません。
 現在のロケットは、宇宙空間にものを送り出すために設計されています。ぶっちゃけ、ミサイルでは能力不足は否めません。逆に言えば、打ち上げロケットをミサイルとして(利用可能だとしても)使うのは、オーバースペックですし経済的ではありません。戦争も結局は経済性が求められますからね。ってなことは政治学者さんなら十分承知していると思いますよ。
 軍事面から考えても、ロケットをそのままミサイルに使うことは考えにくいでしょう。ロケットは宇宙空間まで到達することが目的ですから、そこから再度地表を目指す設計にはなっていません。ミサイルとしては、地上の目標に到達することが重要ですから、ロケットを転用するなら、目標に到達するための管制装置やら制御装置やらが必要になります。そしてミサイルにも信頼性が必要です。装備化するまでに何度もテストして、使えることを確かめなければなりません。試射もしていない武器を使うなんて、ありえません。いきあたりばったりで使うくらいなら、信頼のおける既存兵器を使うでしょう。ミサイルを作るなら、ロケットの転用ではなく、最初からミサイルを作った方が楽です。
 ちなみに射程の長い誘導弾の最終テストは日本では行えないので、アメリカで行っています。なので、アメリカに対しては日本の技術はオープンに為ざるを得ません。
 ミサイルへの転用が不可能とは言いませんが、難しいということは明白です。ですから、
とりわけ中韓との関係が悪化している中で、また北朝鮮が核・ミサイル開発をしている中で、日本がイプシロンを今、この時期に打ち上げることが外国に対してどのようなメッセージとして伝わるか考えているのか
 という疑問はまったくの的外れということになります。
 そもそも、騒いでいるのは中韓(特に韓国)だけです。「イプシロンはミサイルに転用可能」などという陰謀論を元にすれば、どんなメッセージだって曲がって解釈されてしまいます。別にイプシロン開発を秘密裏に行っていた訳でもないですし、邪推にまで配慮しなければならない理由はありません。ヤレヤレ ┐(´ー`)┌
 このセンセイは、他にもこんなことを書いています。
むしろ、イプシロンは、ISAS(JAXA宇宙科学研究所)がM-Vを失ってから、何とかISASのロケットを復活させたいと考えている人たちによって強くロビイングされ、文科省もそれを受けて開発していったものと見ています。
 完全に邪推ですね。あるなら証拠を見せて欲しいですね。というか、M-Vを「失って」という表現がおかしいですよね。国際的な不況があり予算も限られているなか、M-Vでは効率が悪いからイプシロンの開発が始まったわけで、何かトラブルがあってM-Vが引退したわけじゃないでしょう。文全体に悪意を感じますね。
また、それを支えた論理として「固体ロケット技術は将来のミサイル技術になりうるものだから、維持しなければならない」というものがあり、この論理で考えている政治家や産業界の方々によって支持されてきた結果であるともいえます。
技術は継承していかなければなりません。一度失われた技術を復活させるのは大変なことです。偉い人にはそれがわからんのですよ。本当に科学技術ってものを理解していない人の考え方ですよね。で、最初の方では疑問でしかなかったロケットのミサイル転用ってことが、もう確定したものであるかのような書き方。
 繰り返しになりますが、イプシロンは秘密結社が秘密裏に開発したものではありません。何年も前から開発を公表し、スケジュールも発表してきました。世界が開発に疑問を持ったとしたなら、その時点で何らかの反応があるはずです。いまさら中韓が文句を言ってきたからといって、じゃぁ止めますというのもおかしい話です。
 折角のイプシロン打ち上げ成功に水を差されたような気がして書きましたが、まぁ、何にでもいちゃもんをつけたがる人はいるわけです。でも間違った認識が広まるのは困るので、自分の知っている範囲での反論はさせていただいた次第です。

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