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2015/11/18

薬師寺涼子の怪奇事件簿 海から何かがやってくる

 薬師寺涼子シリーズの最新刊「海から何かがやってくる」読了。少し批判的なことを書きます。ファンの方は読まない方がいいかも。
 まずは、シリーズを知らない方へWikiへのリンクを張っておきます。
 Wikiにもあるように、(もちろんフィクションの)荒唐無稽なお話であり、その内容にあれこれ言うのも野暮かも知れません。しかし、シリーズは全部読んでアニメも見ていた私が「海から何かが~」を読んでいて非常に苦しい思いをしたので、敢えてこの気持ちを吐露したいと思ったのです。つまり、愚痴です。
 さて、この薬師寺涼子シリーズの最大の読みどころは、主人公・薬師寺涼子のキャラクターであることは間違いないでしょう。大企業の令嬢であり、警視庁キャリア、容姿端麗秀麗眉目、頭もキレて戦闘力も高い。しかし、部下のノンキャリアの泉田警部補にほのかな好意を抱いているという、近年のライトノベルに見られる完璧主人公の逆バーションとも言えるキャラクターです。
 涼子は、警視庁内部の表に出せないような情報を握っていて、時に公然と脅迫するなど、ただ強いだけの正義の味方ではなく、あくどい部分もあります。また、権力者に対してはとことん辛辣で、自分に刃向かう気配があれば躊躇することなくたたきつぶします。そのためシリーズ全体を通して、権力者(政治家や金持ち)をあげつらい、こきおろすシーンが度々出てきます。しかも、現実の事件や醜聞をモチーフにして。これが、作品のスパイスにもなっていますし、涼子よりもあくどい連中を登場させることで“主人公のダークサイド”を薄めています。
 しかし。「海から何かが~」における権力者批判は、間違った認識を基にしている上に不快でもあると感じました。前作の「魔境の女王陛下」にも、権力者批判はありましたが、今作ほど気にはなりませんでした。前作の舞台が海外(ロシア)で今作は東京(といっても西ノ島の近く)だからでしょうか?自分の不快ポイント、違和感を覚えたポイントを挙げてみます。
  • 海上自衛隊のオスプレイ?
     一番引っかかったのはこれかも知れません。最初はUS-2(とは明言されていませんがそれっぽい)飛行艇が登場します。こちらも税金の無駄遣い的な表現をされるのですが、それよりもその後に登場するオスプレイをさして、主人公は「未亡人製造機」と呼びます。この程度の認識ですか?オスプレイの開発段階における事故を挙げて、日本のマスコミなどで未亡人製造機などと揶揄していましたが、開発時の事故なんて合って当たり前。最初から完璧な航空機なんてないんです。さらに付け加えるなら、未亡人製造機なんて名称を付けられた機体は過去にも多く存在します。要するに、因縁付けレベルの揶揄です。
     また、作者はオスプレイの飛ぶ姿を見て「よちよち歩きの幼児みたい」に飛んでいると表現しています。個人の感覚なのでとやかく言うこともないと思いますが、オスプレイの飛行がフラフラと感じるなら、普通のヘリコプターの飛行もフラフラと感じるのでしょうね。
     さらに、自衛隊のオスプレイを「海上」自衛隊が運用していることになっています。実際の配備先は「陸上」自衛隊です。作者としては、US-2(と思われる飛行艇)を登場させたので、その流れで海自にしたのでしょうが、陸自にしておいた方が後の展開も違和感がなくなったはずで、もったいないなと思える間違いです。
     ネタバレにもなってしまうので、あえてぼやかして書きますが、作中のような状況になったら、海上自衛隊だけでなく、陸自や空自も任務に就くことになるでしょう。ただし、「人命救助優先」です。
  • 特定秘密保護法を勘違い?
     特に物語の前半に、特定秘密保護法が登場します。が、その使われ方が「これは特定秘密なので話せない」、知ってしまったら「拘束する」というものです。これは、特定秘密法を理解していないか、意図的に誤解して使っているかのどちらかでしょう。戦中の特高のようなイメージで、読者に恐怖と不条理を感じさせる道具なのでしょうが、誤った認識を読者に植え付けることにもなりかねません。特に若い読者は、これがフィクションなのだといっても、特定秘密保護法が一般国民を脅迫する悪法であるかのように思い込む危険性もあります。
  • 海上自衛隊がバズーカ?
     物語の終盤で、海上自衛隊がバズーカを使用する場面があります。バズーカと呼ばれる兵器は元々「携帯型の対戦車ロケット発射装置」で、拡大解釈しても「携帯型ロケット弾発射器」。陸自ならカールグスタフがあるので納得できるのですが、海自の装備でバズーカ?
  • 民間人を撃たせようとする自衛官
     物語として悪人を作ることは否定しません。フィクションなのですから、悪人が自衛官であっても警官であっても構わないでしょう。悪徳警官や事件を起こす自衛官だって皆無じゃありませんから、気持ち的に引っかかるとしても許容範囲と言えます。しかも、この世界では権力と金があれば事件のひとつやふたつ簡単にもみ消せるという設定なので、陰謀に荷担する横柄な自衛官が民間人を撃ち殺せと命令しても、まぁ、物語ですから。でも、再三書きますが、海自なんですよ?小銃で撃ち殺すなんて方法とるでしょうか?
     第一、アレを奪い取るなら輸送中の方がいいでしょうし、口封じなら艦砲射撃でいいでしょう。要するに、悪役が頭悪すぎなんです。主人公の引き立て役なのかも知れませんが、相手が賢い方が主人公の能力も際立つってもんでしょう?
  • 病気を揶揄するのはどうか?
     安倍首相をモデルにしたドベ首相なる人物が語られます。本人が登場する訳ではなく主人公たちの会話の中で登場するのですが、ヒットラーに喩えたり(左翼思想な方々の定番ですね)日本を戦前に引き戻そうとするかのような人物として描かれます。これまでのシリーズの中でも政治家はさんざん揶揄されて来ましたし、悪役を作ることは(以下略)。ですが、「寿司を食べて腹を下した」はどうでしょう?自分ではどうしようもない病気を笑いの種にするのはいただけません。ハゲとかチビとかと同じ、いやそれ以上にひどい誹謗中傷ではありませんか?抗がん剤の副作用で頭髪がなくなった人に対して「ハゲ」といったら大問題になるのでは?それとも美少女なら許されないけど、おっさんならどんな病気の症状をあげつらってもいいと?ものすごく不快にさせる場面です。
 こうした点は、物語においては枝葉の部分です。しかし、枝葉の部分であるからこそ、「なくてもよい」部分ではないかと。「いや、これこそ必要なのだ」と思う方もいらっしゃるでしょうが、私はオスプレイとか海自とか、間違いを見るにつけ読むことが苦痛になりました。
 次回作以降でも、権力者への揶揄はなくなることはないでしょう。それを目当てに読む読者がいることは間違いないでしょうし、権力者をばったばったとやっつける薬師寺涼子の活躍を読んでスカッとする読者も多いでしょう。ですから、せめて「海自のオスプレイ」のような基本的な間違いや「特定秘密保護法」を誤解させるような表現がなくなることを期待します。

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